TOP > 活用事例 > 一般財団法人神奈川県警友会 けいゆう病院
昭和初期に警察病院として開設された神奈川県警友会 けいゆう病院。1996年に現在のみなとみらい21地区に移転・新設され、410床を有し、1日平均入院325人、1日平均外来1258人の患者が利用する。神奈川DMAT、神奈川県がん診療連携指定病院などに指定される地域の基幹病院である。
410床に対して薬剤師40人が在籍する薬局では、ICUを含めた全病棟に10人が常駐する他、手術室、近年では入院受付にも薬剤師を配置。患者の持参薬把握を徹底し、アレルギー歴などの情報収集を行うなど、患者一人ひとりに適したより安全な薬物治療が受けられる体制を講じている。また、外来化学療法室における抗がん剤調製や、組織横断的な感染制御チーム(ICT)、栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチームなど、様々な分野の専門・認定を活かした薬剤師が効果的な医療を実践している。
DI業務は病棟と兼務する2人の薬剤師が担当し、病棟薬剤師との連携を強化することにより、副作用、プレアボイド情報や未承認・適応外使用・禁忌薬の使用状況などの収集・評価にも取り組み、病棟の医療安全強化を実践している。
こうした薬局業務をDIの側面で支える他、病院全体の薬物治療における安全性・有効性を向上するために導入されたのが、JUS D.I.である。
以前のDIに関する情報管理システムでは、持参薬管理システムに付属したDI機能があり、添付文書参照や同効薬検索などができた。ただ、情報の更新は1か月に1回であることに加え、単にCD-ROMでアップデートするだけでなく、更新内容を見ながら情報のひも付けを行う必要があり、非常に煩雑で作業負担が大きかったという。「添付文書の参照と同効薬検索ができればいいと思い使い続けてきましたが、月1回とはいえ更新に1時間程度かかり、作業が大変でした。添付文書はテキスト表示であったため、視認性が悪いという欠点もありました」。DI担当薬剤師の鈴木信也氏はこう振り返る。
また、更新が月1回であるため、最新のDIを収集するために、卸会社が運営する医薬品情報サイトやPMDAのサイトで頻繁に検索し、一つひとつ手作業で情報の収集や院内配信などを行ってきた。そこで鈴木氏らは、2018年1月の電子カルテシステムの更新と部門システムの見直しを機に「DIシステムは薬局だけでなく、病院全体で使用することで価値があるものと強調」(鈴木氏)してJUS D.I.導入に踏み切った。
DI担当薬剤師 鈴木 信也 氏
JUS D.I.を採用した動機は、多くの病院薬剤師から高い評価を得ていたからだという。
鈴木氏は医薬品情報学会のフォーラム委員を務めており、2015年第4回フォーラムでJUS D.I.を運用する草加市立病院、横浜総合病院、亀田総合病院などの発表で利便性を理解していた。また、「藤沢市民病院や東京女子医科大学病院などの先生からも使用感を聞いていて、導入してみたいと考えていました」(鈴木氏)と、JUS D.I.に注目していた背景を説明する。
導入したJUS D.I.で成果を端的に感じるのが、常に最新の医薬品情報を維持でき、精度が保てるとともに、その情報のメンテナンスの容易さだとする。従来の環境では月1回の更新で1時間程度を要していた作業が、毎日数分で済む。「日々、最新の情報であることを自覚できる上、採用薬区分に関して、本採用・仮採用・特定科採用・患者採用・院外採用をきちんと管理することができ、最新の医薬品情報を基にさまざまな視点で評価ができるようになりました」(鈴木氏)。
また、医薬品集を年1回発行し、院内ポータルなどで配信しているが、従来のシステムではテキストデータをMicrosoft Wordで編集するなど数時間を要していた。JUS D.I.では「わずか10分ほどで医薬品集が完成する」(鈴木氏)とし、年1回とは言え、作業効率の高さと負担の軽減を実感している。
医薬品情報収集の業務については、多くの最新情報をJUS D.I.が網羅していることから、収集のための煩雑さが大幅に軽減され、効率的な収集が可能だという。
「以前はPMDAや製薬会社のサイトを中心に、あちこちで情報収集する必要がありました。特にPMDAのサイトは情報検索がややこしく、抽出するのが大変でした。今ではJUS D.I.を見れば、添付文書からインタビューフォーム、RMP、患者使用ガイドなど、すべて一元的に参照・検索できるのは、当院のようにHISとインターネットが独立した環境においては大変ありがたい。しかも最新情報であることが担保されているので、安心して情報活用できます」(鈴木氏)。
JUS D.I.のVer6では、鈴木氏が挙げた情報の他、どちらからも検索できる先発・後発品情報、安全性情報(PMDAおよび製薬会社)、医療用医薬品回収情報、包装変更や色調・剤形変更など50種類以上の情報を網羅している。
医薬品管理担当 野村 嘉奈子 氏
医薬品管理担当の野村嘉奈子氏は、こうした情報の中で特に経過措置情報の収載が最も助かっていると話す。
「経過措置薬品をインターネット上で調べていると、当然ながら採用薬以外もすべて掲載されていますが、記憶の下に採用薬か否かを判断しながら収集していると抜け落ちるものもでてきます。JUS D.I.ではその不安が無く、採用薬区分が明確に保たれているので、採用薬における経過措置薬品を抽出でき、非常に役立っています」(野村氏)。
また、配合変化に関する情報収集と管理などにおいても、その作業が効率的にできるという。製薬会社サイト等で調べて取得した配合変化表(PDFなど)を、JUS D.I.の添付文書画面にリンク付けして、利用者が参照しやすいようにしている。
「配合変化表の他にも、簡易懸濁の可否、製品情報概要、適正使用ガイドなど製薬会社が配布している情報にリンク付けして提供しています。化学療法グループが自ら収集してきたファイルの提供を受け、リンクを張るケースもあります」(野村氏)と説明する。
けいゆう病院では、収集・管理・評価した医薬品情報の院内への提供も積極的に行っている。JUS D.I.導入申請の際に、「薬局だけが使用する部門システムではなく、病院全体で利用するシステム」であることを強調したことに、その意志が表われている。
それを実践するために、電子カルテの画面上と院内ポータル画面上に「DIのお知らせ」というタブを配置し、そこからJUS D.I.のお知らせ掲示板が起動するようにして情報提供・共有に務めている。「以前のシステム環境では電子カルテで右クリックしてDIメニューから添付文書参照だけは可能でした。JUS D.I.は同様の方法に加え、電子カルテ画面と院内ポータル画面からアクセスできるようにし、利便性の向上を図りました。実際に病棟で医師がJUS D.I.にアクセスしている姿も良く見ます。」(鈴木氏)。
JUS D.I.のお知らせ掲示板では、定期的に情報提供してきた「医薬品情報誌」、毎月発信する「医薬品医療機器等安全情報」、「採用薬品集」、「薬事委員会審査結果」、「薬事委員会申請書」などのカテゴリーを設け、それぞれで随時最新情報を掲示・提供する。
薬事委員会申請書は従来、電子カルテシステム内の文書管理フォルダに収載していたが、保管場所のフォルダ階層が深く、非常にわかりにくかったため、薬局へ頻繁に問い合わせがあったという。そこで、JUS D.I.のお知らせ掲示板に申請書ダウンロードの情報を掲示するようにしたところ、医師からの問い合わせはかなり少なくなったと話す。
「多くの病院は、薬剤部のホームページを立ち上げて情報提供を試みているようですが、市販のホームページ作成ソフトを駆使して作り上げるテクニックを習得するのも大変ですし、作成・更新する時間を捻出するのも困難です。簡易的なポータルですが、医薬品情報管理システムの一機能として簡単に使えるのは非常に便利であり、重宝しています」(鈴木氏)と、JUS D.I.の情報提供機能を高く評価している。
薬事委員会の結果を閲覧することが多いという野村氏は、「ある医薬品がいつ申請されたか、結果がどうであったかを素早く知ることができます」と述べている。
同氏はまた、JUS D.I.が包装変更の情報を画像付きで収載していることも評価している。病棟看護師に言葉で変更内容を伝えても、実際に包装変更された輸液パックなどを見ないと不安。「従来は製薬会社のサイトから画像を取得してメールなどで伝達していましたが、今は包装変更情報を知らせ、実際に画像を見て確認してもらうよう指示するだけで済みます」(野村氏)とし、手間をかけることなく安全な使用を支援できると話す。
今後、JUS D.I.に期待するのは、DI室として誰がどのような医薬品情報を求めているかニーズを明らかにしつつ、的確な情報提供を実現していくことと鈴木氏は語っている。
「アクセスユーザーが特定できるようにすることで、医師や看護師がどのような情報にアクセスしているか把握・分析が可能になります。それにより、より各者のニーズに沿った情報提供が可能になると考えています」(鈴木氏)。
また、近年は保健所の立ち入り検査などで、イエローレターなど重要な情報は提供しているだけでなく、関係者に確実に伝達されているか問われるようになった。
「ユーザー別アクセスが明らかにできれば、当該者が情報を認識したかどうか明確になります」とし、情報内容を認識した実態の証跡として利用したいと述べている。そして、鈴木氏はJUS D.I.がDI業務にもたらす変化・進展をこう締めくくった。「多くの病院薬剤師がJUS D.I.を高く評価していたので期待を持って導入しました。実際に運用してみて、高く評価する理由も理解できました。特に運用開始後にDI担当以外の薬局スタッフが主体となり、配合変化データ、適正使用ガイドや患者指導せんの情報や資料を率先して収集した際に、薬局全員が日頃からJUS.D.I.を活用し、高く評価をしていることを実感しました。期待以上の運用成果を感じている今、自分も尋ねられれば自信を持ってJUS D.I.に対する評価を伝えたいと思います」。