2011年6月よりJUS D.I.を活用する草加市立病院。病棟に配置したサテライト薬局における情報資源・環境整備の一環として導入されたJUS D.I.は、サテライト薬局の薬剤師のみならず、薬剤部の重要な情報収集・管理ツールとして機能している。フィルターを駆使した絞り込み検索の活用に加え、付加情報を自分たちで追加することで現場視点の情報提供を実現している。
埼玉県東部に位置する草加市の自治体立病院、草加市立病院は60年近い歴史を持つが、10数年前までは200床規模の比較的小さな地方病院だった。しかし、東京近郊の25万人都市へ発展したことを背景に、2004年7月に360床(現在は380床)の新病院に生まれ変わった。その後、2012年4月に心臓・脳血管センターを開院、2014年12月には災害拠点病院の指定を受け、地域の中核急性期病院としての機能を果たしている。
薬剤部主査
医薬品情報管理室
木村 好伸 氏
同病院の薬剤部は常勤薬剤師18人からなり、処方調剤や注射調剤、抗がん剤混注、医薬品情報管理などを行うセントラル薬局と、薬剤管理指導・病棟薬剤業務を担うサテライト薬局を設置している。病棟常駐薬剤師を配置したのは10年以上前からだが、2004年からはサテライト薬局として病棟に別室を設け、現在は8人の薬剤師が医師・コメディカルとの協働体制を構築している。サテライト薬局を設置した利点について、薬剤部主査(医薬品情報管理室)の木村好伸氏は次のように話す。
「10年以上の実績を経て、医師・コメディカルとのコミュニケーションが日常的に行われ、薬剤師が臨床に深く入り込んだことから、担当する診療科に特化した臨床知識も豊富になり、質の高い薬物療法への貢献ができるようになりました。また、DI業務に関しても、緊急安全情報やブルーレター・イエローレターが出た時など、医師と薬剤師とが直接対面で情報提供し、医師の理解も確認できるようになりました」。
サテライト薬局担当の薬剤師の課題は、病棟には医薬品の情報資源が限られていること。「薬剤部で年1回発行する冊子版の医薬品集以外は、薬剤師個人で持っている書籍や資料のみ。かつては、添付文書すらセントラル薬局に降りてこなければ見られない環境でした」(木村氏)という。
そこで薬剤部では、病院情報システムのネットワークを利用したQ&Aデータベースの構築や共有フォルダを活用した情報資源・共有環境を整備してきた。2011年6月に導入したJUS D.I.も、そうした情報資源・環境整備の一環として活用するようになった。
JUS D.I.導入を検討した直接的な理由は、医師から最新の添付文書情報が欲しいという要望だった。「2カ月ごとに薬事審議会があって採用薬が変更になっても冊子版の医薬品集には反映されず、医師から添付文書を容易に見られるようにならないかと要望を受けていました。PMDAのホームページから添付文書をダウンロードして共有フォルダで情報提供したりもしましたが、全館で最新の添付文書を閲覧できる環境を構築したいということで、診療科部長の声を基に稟議を申請して導入に至りました」(木村氏)と、JUS D.I.導入の経緯を振り返る。
JUS D.I.の実際の活用は、医師は処方のタイミングで当該薬の添付文書を参照するケースが多い。電子カルテ連携でJUS D.I.にアクセスすることで最新の情報を入手することができ、添付文書に関する問い合わせは減りました。一方、病棟薬剤師も最新の添付文書参照や採用薬検索・閲覧として利用することが多いと、病棟薬剤師の小川陽子氏は言う。「それまでサテライト薬局では冊子版の採用医薬品集以外、医薬品情報を得る方法は限られていましたから、JUS D.I.が利用できるようになり、そのメリットは大きかった」(小川氏)。
薬剤部薬剤師 小川 陽子 氏
特に小川氏は、JUS D.I.の絞り込み検索が非常に役に立つと指摘する。例えば、同成分薬や同効薬検索では、医師から同成分の他の剤形でどのような薬があるか、採用品以外ではどうか、など聞かれることが多く、その際によく検索機能を活用するという。JUS D.I.には常に最新の情報によるデータベースが備わっており、そこから必要な情報を抽出できるよう様々なフィルターの組み合わせを利用する強力な絞り込み検索機能がある。それらを駆使することで、手間のかかる情報収集・整理が容易かつ素早くできると、そのメリットを強調する。
また、薬理作用別分類も非常に使いやすいと話す。「かなり細かく階層化されて分類されているので、同じ成分や系統、作用などで調べることができ、うまく使いこなすととても便利です」(小川氏)。
こうした検索機能の活用と合わせて、JUS D.I.のエクスポート機能を利用することで、情報をファイル出力できることも評価されている。例えば、検索によって自院採用のインスリン一覧を抽出し、それをファイルとして出力する。これにインスリン開封後の使用期限などの情報を追加・加工しオリジナルな資料が完成する。他にも同種同効薬をファイル出力し薬事審議会の比較資料にするといった活用である。このようにJUS D.I.は情報の加工の面においても支援するシステムとして働いている。
「これまで調べ上げてきた自院独自の医薬品情報をJUS D.I.に付け加えデータベースとして構築し、病院全体に情報を配信することが可能です。逆に、構築した情報をエクスポート機能によってファイル出力し、加工することでモバイル化して持ち歩くことも簡単にできます」(木村氏)と話す。
また、付加情報を自分たちで追加する一例として、木村氏は外部情報へのアクセスのためのQRコードの貼付についても説明した。院内にはインターネットに接続できる端末の台数は限られており、外部から情報を得る手段は限定される。そうした際に、例えばイナビル吸入粉末剤の薬剤情報欄に、吸入情報が掲載されたサイトのURLをQRコード化して付加しておけば、スマートフォンで読み取ることで情報サイトにアクセス可能になる。参考として参照したい情報などへの簡単なアクセス法として、便利に使っているという。
「JUS D.I.は添付文書、インタビューフォーム、患者向医薬品ガイド、医薬品リスク管理計画書など医薬品の基本となる情報が揃っており、それが常に最新の情報へ更新される。加えて、運用規定、安全対策、粉砕や簡易懸濁法可否、QRコードなどのオリジナル情報を付け加えることで独自の医薬品情報システムへと進化できるところがユニーク。また、JUS D.I.メーカーはユーザーの声を大切にしていて、こちらからの要望を前向きに検討してくれることも嬉しいところ」(木村氏)と話す。
独自に情報追加・加工した医薬品集や資料を有効に活用している薬剤部だが、JUS D.I.の「お知らせ掲示板機能」の使い方が十分でないと指摘する。「今後はこれをポータル機能として充実させることで、さらなる情報共有の強化に利用していきたい」(木村氏)と述べる。