2009年11月12日、川崎市体育館で開催された「第48回全国自治体病院学会」の薬剤分科会ポスターセッションで、藤沢市民病院薬局の駒井元彦様が「持参薬管理業務の運用と新システムの構築」と題したプレゼンテーションを行われました。その内容についてレポートいたします。
藤沢市民病院は2008年4月からDPC導入病院となり、入院患者数増加、救命救急センターなどからの対応を強化するとともに、持参薬を有効に活用する必要が生じました。従来から実施していた持参薬管理業務の重要性が、一層増したわけです。
そこで、医薬品情報一元管理システムの導入が不可欠となりました。患者様の医療費負担の軽減、DPC導入に伴う病院経営の改善とあわせて、持参薬管理業務の安全性向上を目指して、薬局の業務改革に取り組みました。
まず、院内システムでの持参薬共有フォルダ化によって、各病棟で行っていた持参薬検索を薬局で実施し、持参薬報告書を指示簿としてカルテに保管して運用するなど、業務形態を変更しました。そのベースとして、日本ユースウェアシステム株式会社の医薬品情報一元管理システム「JUS D.I.」を導入し、院内用の持参薬指示票をVisualBasic(Microsoft製)で変換するシステムを09年5月に構築し、試験運用を開始しました。
具体的には、JUS D.I.で作成した持参薬管理票を院内用の持参薬指示票に変換するシステムとして、JUS D.I.で出力した持参薬データをExcel形式で保存し、そのデータをVisualBasicでファイルを変換した後に、当院独自のマニュアルに従って持参薬指示表を作成して各病棟の共有フォルダに移管・保存する形で実現しました。
この共有フォルダを実装することによって、病棟ごとに異なっていた持参薬報告書が院内で統一されました。あわせて、医師が指示簿への持参薬情報を転記する必要がなくなり、従来、看護師が手書きで作っていた「持参薬控え」を持参薬指示表の作成と同時に作成することも実現できました。
その結果として、持参薬の利用率が低かった病棟でも持参薬が有効活用されるようになり、持参薬指示表に「並び替え」機能を付加して、中止薬と継続薬の識別を簡易にできたことが導入の効果として挙げられます。
持参薬共有フォルダ化によってさまざまなメリットが浮かび上がりましたが、一方で、改ざんを防止するために持参薬指示表が一度しか利用できない……、などの課題もいくつか顕在化しました。
ですが、システム構築・運用後の効果としてはまず、医師が指示簿への持参薬情報を転記する必要がなくなり、従来、看護師が手書きで作っていた「持参薬控え」を持参薬指示表の作成と同時に作成することも実現でき、投薬時の監査の導入と、転記作業の減少によって人為的なミスが減ったことが明らかになりました。そして、担当薬剤師の午前中業務のデータ集計では、薬剤管理指導件数は徐々に減り、09年5月からの試験運用開始後、わずか約6カ月間の集計ですが、持参薬関連の薬剤費は450万円ほど節減されました。
09年9月から本格運用を開始後の試算では、直近(注:2009年10月末現在)、累計約180万円の費用を削減できたという結果が出ています。
持参薬関連で言えば薬剤費は明らかに節減され、業務効率の向上と、医療安全の確保、そして病院経営の改善に少なからず寄与していると思われます。(談)
駒井先生はポスターセッション終了後、JUS D.I.導入のメリットについて、「導入前は病棟ごと、もしくは個人的にバラバラに行っていた持参薬管理を、病院全体でシステマティックに行うことが実現できました」と補足して下さいました。